SNS運用外注で600万円失った経営者が最終的にたどり着いた内製化の極意

私は過去5年間、延べ200社以上の中小企業のデジタルマーケティング戦略を支援してきました。その中で、最も多くの経営者が陥る罠があります。それは「SNS運用を外注すれば売上が上がる」という幻想です。

先日、私のコンサルティング生の一人から衝撃的な報告書が届きました。彼は地方で製造業を営む40代の経営者で、年商3億円規模の会社を経営している真面目で勤勉な人物です。従来のBtoB営業では一定の成果を出していました。

しかし、コロナ禍で既存の営業手法に限界を感じた彼は、SNSマーケティングに活路を見出そうとしました。そして、この判断が600万円という高額な授業料を支払う結果となったのです。

「先生、正直に報告します。この1年半で、SNS関連に600万円使いました。しかし、売上への直接的な貢献はゼロです」

この一通のメールから始まった彼の告白は、多くの経営者が犯している致命的な間違いを浮き彫りにしました。フォロワー数は確実に増加し、投稿のクオリティも向上した。表面的な数値だけ見れば「成功」に見える。だが、肝心の売上は1円も増えなかったのです。

実は、この事例は決して珍しいものではありません。私がこれまで相談を受けた企業の約70%が、同様の失敗を経験しています。金額の差はあれど、構造的な問題は同じなのです。

なぜ、フォロワーが増えても売上に繋がらないのか。なぜ、綺麗な投稿を作っても顧客は生まれないのか。この章では、600万円を失った経営者の生々しい体験談を通じて、SNS外注の闇を徹底的に暴露していきます。

この600万円の事例を分析していくと、なぜ「優秀」とされる業者でも失敗するのかが見えてきます。問題は個々の業者の能力ではありません。業界全体に根深い構造的問題が存在するのです。

私が200社以上の支援を通じて発見した最大の問題は、外注業者のビジネスモデル自体にあります。彼らの収益構造を冷静に分析してみましょう。

まず、多くの業者は「継続課金モデル」で運営されています。月額10万円から50万円の管理費を長期間受け取ることが前提です。つまり、彼らにとって最も重要なのは「顧客の売上向上」ではなく「契約の継続」なのです。

この構造が生み出す歪みは深刻です。業者は「数字の改善」に集中します。フォロワー数、いいね数、投稿頻度——これらの指標を向上させることで「成果を出している」ように見せかけるのです。しかし、これらの数字と実際の売上には何の相関もありません。

先ほどの製造業の経営者のケースを思い出してください。フォロワーは5,000人に増えましたが、売上は1円も増えませんでした。なぜか？業者は彼の顧客が誰で、何を求めているかを理解していなかったからです。

私が直接話を聞いた別の事例では、ある業者がアパレル店のInstagramでグルメ投稿を続けていました。理由を尋ねると「エンゲージメント率が高いから」という答えが返ってきました。確かに「いいね」は増えます。しかし、グルメに興味がある人が服を買うでしょうか？

さらに深刻なのは、業界の「専門性の錯覚」です。多くの業者は「SNSの専門家」を名乗りますが、実際は投稿作成とスケジューリングツールの操作しかできません。顧客の事業理解、市場分析、競合研究——これらの本質的な作業は完全に欠落しているのです。

契約更新の時期が近づくと、彼らは必ず「改善レポート」を提出します。グラフと数字で埋め尽くされた見栄えの良い資料です。しかし、その中に「売上への貢献」という最も重要な指標は含まれていません。

この業界構造を理解せずに外注に依存すると、必ず失敗します。優秀な個人がいても、システム自体が歪んでいるからです。

前章で外注業者の構造的問題を明らかにしました。では、どうすれば真の成果を出せるのか。答えは「内製化」にあります。

私が支援した企業の中で、劇的な成果を出している企業には共通点があります。それは「自社の価値を深く理解し、それを言語化できる」ということです。

例えば、先ほどの600万円を溶かした製造業の経営者。彼の転換点は、外注を止めて内製化に舵を切った瞬間でした。最初は「素人の自分にできるわけがない」と抵抗していましたが、私は彼にこう伝えました。

「あなたの会社の製品が、なぜお客様に選ばれるのか。その理由を一番理解しているのは誰ですか？」

この問いかけから、彼の意識が変わりました。自社の技術力、品質へのこだわり、お客様との関係性。これらすべてを最も深く理解しているのは、経営者である彼自身だったのです。

内製化に転換してから6ヶ月後、彼の会社のSNSフォロワーは3倍に成長し、問い合わせ数は前年同期比400％増となりました。使ったコストは月額5万円以下。外注時代の10分の1以下です。

成功の鍵は技術ではありません。「自社の価値」と「顧客の本質的ニーズ」を深く理解し、それを的確に言語化する洞察力です。これこそが、持続可能な成果を生む根本的解決策なのです。

外注業者は100社の案件を抱えますが、あなたは自社1社に集中できます。この集中力と当事者意識こそが、最強の武器となります。

前章で職業別の内製化パターンを示しましたが、多くの人がここで躓く最大の壁があります。それは「思考停止」です。

私が200社以上を支援して痛感するのは、現代人の多くが「答えを教えてもらう」ことに慣れすぎているということです。学校教育では正解が用意され、会社では上司が指示を出し、プライベートではGoogle検索で即座に答えが見つかります。

しかし、ビジネスの現場に「正解」は存在しません。特にマーケティングにおいて、あなたの商品やサービスの価値を最も深く理解できるのはあなただけです。

先日、ある経営者からこんな相談を受けました。「SNSで何を投稿すればいいか分からない」と。私は逆に質問しました。「お客様はなぜあなたの商品を選ぶのか？」すると、彼は黙り込んでしまいました。自分のビジネスなのに、その本質的価値を言語化できないのです。

これが思考停止の典型例です。外注業者に「おすすめの投稿内容を教えてください」と依存する前に、まず自分で考え抜く必要があります。

思考停止から脱却する具体的方法は3つあります。

1つ目は「Why思考」の習慣化です。何かを決断する際、必ず「なぜそう思うのか」を3回自問します。表面的な理由を掘り下げ、本質に到達するまで考え続けるのです。

2つ目は「仮説検証サイクル」の実践です。完璧な答えを求めるのではなく、小さな仮説を立てて実行し、結果から学びます。失敗を恐れずに行動することで、思考力は鍛えられます。

3つ目は「他者視点の強制的導入」です。自分の考えを必ず第三者に説明し、反論してもらいます。論理の穴や盲点が明確になり、思考の精度が向上します。

私自身、この思考停止の罠に何度も陥りました。しかし、依存から脱却した瞬間、真の成果が生まれ始めました。あなたも今すぐ、誰かに答えを求める前に、まず自分で考え抜いてほしいのです。

思考停止からの脱却方法を前章で示しましたが、ここで最も重要な選択に直面します。それは「テンプレートビジネスに流されるか、自分で道を切り開くか」という根本的な分岐点です。

私が200社以上を支援して確信したのは、成功する企業と失敗する企業の決定的な違いは能力や資金ではありません。「自分で考え抜く力」があるかどうかです。

失敗する企業の共通点を改めて整理しましょう。「SNS運用の正解を教えてください」「成功事例と同じことをやれば結果が出ますよね？」こうした質問を投げかける経営者は、例外なく外注で失敗しています。

一方、成功する企業は違います。「この施策の意図は何ですか？」「うちの業界特性を考慮すると、どこを変えるべきでしょうか？」自分なりの仮説を持って質問してきます。

これは能力の問題ではありません。姿勢の問題です。

現在、市場には「3ヶ月で売上2倍」「完全自動化で不労所得」といった甘い誘惑が溢れています。これらは全て、あなたの思考停止状態を利用したテンプレートビジネスです。

私からの最後の警告はこれです。楽な道を選んだ瞬間、あなたは600万円を溶かした製造業経営者と同じ道を歩むことになります。

真の成功は、自分で考え抜いた先にしか存在しません。今日から「なぜ？」を問い続けてください。それが唯一の成功への道です。

※参考：総務省「令和4年情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」によると、企業のSNS活用率は年々増加している一方で、ROI測定に課題を抱える企業が多いことが報告されています。

※この記事は筆者の実体験と観察に基づいて書かれており、すべての方に同じ結果を保証するものではありません。SNS運用や内製化の効果は、業界や企業規模、実行方法によって大きく異なる場合があります。