はじめまして。僕は現在、SNSマーケティングのコンサルティングを行っている者です。以前は教師をしていましたが、今は「名無しのマーケター」として活動しています。

今日は、僕のコンサル生の一人である元教師の田中さん（仮名）の体験談をお話しします。彼の失敗は、おそらく多くの方が陥りがちな問題を象徴していると感じたからです。

田中さんは中学校で15年間教鞭を取った後、家庭の事情で退職し、SNS副業に挑戦することになりました。教師時代の経験を活かして「勉強法」をテーマにInstagramとTwitterを開始。真面目な彼は、ネットで見つけた「バズる投稿テンプレート」を忠実に実践しました。

「〇〇な人の特徴5選」「知らないと損する△△の法則」といった、よくある形式の投稿を毎日欠かさず投稿。教師らしく丁寧に作り込んだ投稿でしたが、3ヶ月経ってもフォロワーは100人程度。「なぜ結果が出ないのか」と僕に相談してきました。

彼の投稿を見た瞬間、問題は明らかでした。確かに情報は正確で、レイアウトも綺麗。しかし、どこかで見たような内容ばかりで、田中さん「らしさ」が全く感じられないのです。

教師時代の「正しいことを正しく教える」というスタンスが、SNSでは裏目に出ていました。フォロワーが求めているのは「教科書的な正解」ではなく、「この人だからこそ語れる体験や視点」だったのです。

この体験談から見えてくるのは、表面的なテクニックに頼ることの限界です。多くの人が同じテンプレートを使えば、結果的に似たような投稿で溢れ、埋もれてしまうのは当然といえるでしょう。

田中さんの事例を通じて、一つの重要な問題が浮き彫りになりました。しかし、これは決して彼だけの問題ではありません。僕がこれまでに受けた相談を振り返ると、属性に関わらず、ほぼ全ての方に共通する根本的な課題が見えてきたのです。

会社員の山田さんは「副業解禁の波に乗って稼ぎたい」と相談に来ました。主婦の佐藤さんは「子育ての合間に家計を助けたい」と。大学生の鈴木くんは「就活前にスキルを身につけたい」と言っていました。フリーランスの高橋さんは「収入の柱を増やしたい」という動機でした。

一見すると、それぞれ異なる背景と目的を持っているように見えます。しかし、彼らの投稿を見ると、驚くほど似たような内容になっているのです。

「副業で月30万稼ぐ方法」「主婦でも簡単に稼げるSNS活用術」「学生のうちに身につけておきたいマーケティング思考」「フリーランスの収入を安定させる秘訣」

これらは全て、市場に溢れているテンプレートの焼き直しです。そして、彼らが気づいていない共通の弱点があります。それは「相手の立場で考える力」の決定的な不足です。

会社員の山田さんは、同じ会社員に向けて発信していました。でも、会社員が会社員から副業を学びたいでしょうか？主婦の佐藤さんは、主婦向けの内容ばかり。でも、主婦が主婦からビジネスを学ぶ理由は何でしょうか？

彼らは皆、「自分と同じ属性の人」に向けて発信することが正解だと思い込んでいました。しかし、これは大きな勘違いです。お客様が求めているのは「同じ境遇の人の体験談」ではなく、「問題を解決してくれる専門性」なのです。

市場にテンプレートが溢れている理由も、ここにあります。多くの指導者が「型」ばかりを教えて、本質的な思考法を伝えていない。結果として、似たような発信者が量産され、誰も収益化できない状況が生まれているのです。

多くの相談者に共通する問題を発見した僕でしたが、実は最も深刻な問題を抱えていたのは僕自身でした。

当時の僕は、元教師という経歴を武器に「正しいSNSマーケティングを教える」というスタンスでコンサルを行っていました。クライアントに対しても「これが正解です」「こうすれば必ず結果が出ます」という、まさに教室で生徒に向かって話すような態度で接していたのです。

転換点となったのは、ある日のクライアントとの面談でした。田中さんが僕の指示通りに投稿を続けているのに結果が出ず、困り果てた表情で「先生、僕には才能がないんでしょうか」と呟いたときです。

その瞬間、ハッとしました。僕は「教える側」として高い位置から指導していたため、田中さんは「教わる側」として自分を下に置いてしまっていたのです。これでは対等な関係での本音の相談など生まれるはずがありません。

「田中さん、実は僕も最初は全然ダメだったんです」

僕は思い切って、自分の失敗談を話し始めました。教師を辞めた直後の不安、初めての投稿が無視された絶望感、何度も心が折れそうになった体験…。すべてを正直に話しました。

田中さんの表情が変わりました。「先生も同じだったんですね」と、初めて安心した笑顔を見せてくれたのです。

その日を境に、僕は「教える人」ではなく「一緒に学ぶ仲間」というスタンスに変えました。「僕もまだ学んでいる途中です。一緒に試行錯誤しましょう」という姿勢で接するようになったのです。

結果は劇的でした。クライアントたちが本音で悩みを話してくれるようになり、僕も彼らの生の声から多くを学ぶことができました。田中さんも3ヶ月後には初収益を達成。何より、お互いに成長を実感できる関係が築けたのです。

権威性を手放すのは勇気が必要でした。しかし、読者との真の共感関係はここから生まれるのだと実感しています。

「一緒に学ぶ仲間」として接するようになってから、僕自身も驚くような変化が起こり始めました。

最も印象的だったのは、再び相談に来てくれた田中さんの変化です。以前の彼は「とにかく早く稼ぎたい」という焦りで一杯でしたが、今度は違いました。「生徒たちに本当に価値のある情報を届けたい」という、教師時代の情熱を思い出したような表情で話してくれたのです。

僕は彼と一緒に、まず「どんな先生になりたかったのか」「生徒たちにどんな影響を与えたかったのか」を振り返りました。そこから見えてきたのは、彼の教育に対する深い想いと、それを現在の仕事にも活かせる可能性でした。

結果として田中さんは、急がずに3ヶ月かけて「新任教師を支える情報発信」というテーマでコンテンツを作り始めました。フォロワー数は以前より少なかったものの、一つ一つの投稿に対する反応の質が明らかに違いました。コメントには「本当に助かります」「現場のリアルな声が聞けて嬉しい」といった、心のこもった言葉が並ぶようになったのです。

6ヶ月後、田中さんから嬉しい報告がありました。フォロワーの一人から「新任教師向けの研修コンテンツを作ってもらえませんか」という相談があり、月額3万円の継続案件として受注できたというのです。さらに、その後も口コミで似たような依頼が増え、現在では月10万円の安定収入を得られるようになりました。

「以前は数字ばかり追いかけて疲れていましたが、今は本当に楽しいんです」と話す田中さんの表情は、初めてお会いした時とは全く違っていました。

この変化は田中さんだけではありませんでした。僕自身も、クライアントと一緒に学び考えることで、従来のテンプレート的なアドバイスでは見えなかった、それぞれの方の本当の強みや可能性を発見できるようになったのです。

これまで5つの章を通して、SNS副業で本当に大切なことをお話ししてきました。しかし今、僕は一つの大きな懸念を抱いています。

それは、巷に溢れる「テンプレートビジネス」の蔓延です。「この投稿文をコピペすれば稼げます」「このDMテンプレートで月収○○万円」といった謳い文句を、あなたも一度は見たことがあるのではないでしょうか。

僕が相談を受ける方の中にも、こうしたテンプレートに頼り切って失敗した人が数多くいます。確かにテンプレートは楽です。考える必要がない。でも、それこそが最大の落とし穴なのです。

テンプレートに頼ると、自分で考える力が育ちません。市場が変化した時、競合が現れた時、突然使えなくなった時—そのすべてが致命傷になります。何より、あなた独自の価値や魅力が全く伝わらない。

一方で、僕がお伝えしてきた「共感と信頼を築く」アプローチは違います。これは思考力を鍛え、あなた自身の成長を促します。相手の「なぜ」を深掘りし、価値ある情報を継続的に提供し、相手の成功を心から願う—このプロセス自体が、あなたをビジネスパーソンとして成長させるのです。

今、あなたは選択の岐路に立っています。思考停止のテンプレートを選ぶか、本質的な成長の道を選ぶか。

僕は後者をお勧めします。そして、もしあなたが本当の意味での成長を求めるなら、一人で悩む必要はありません。ともに学び、成長できる環境がここにあります。