僕は長年、オンラインビジネス市場で多くの起業志望者を見てきた。その中で気づいたのは、この業界が前提としている「時間感覚」が、現実の生活者、特に子育て中の主婦層とかけ離れているということだ。

先日、僕のコンサル生であるAさん（2歳の子を持つ主婦）から、こんな相談を受けた。

「先生、正直に言います。『1日3時間の作業で月収30万』という謳い文句を信じて始めたんですが、現実は全然違いました」

Aさんは涙ながらに続けた。

「子どもが熱を出せば病院。保育園のお迎え、夕食の準備、寝かしつけ…。1日3時間なんて、まとまった時間は週に1回取れればいい方です。でも教材では『時間管理ができていない』『本気度が足りない』と言われるんです」

この告白を聞いて、僕は市場の構造的欺瞞に改めて怒りを覚えた。

多くの起業系教材が謳う「1日○時間」という前提は、子どもがいない、もしくは誰かに預けられる環境にある人を基準にしている。しかし、実際の購入者の多くは、そうした理想的な環境にない主婦層なのだ。

データを見ても明らかだ。育児中の女性の平均的な自由時間は1日1.2時間程度。それも細切れで、集中して作業できる時間となると更に少ない。

にも関わらず、市場は「時間確保ができて当然」という前提で商品を設計し、うまくいかない責任を個人の「努力不足」に転嫁している。

Aさんのような真面目で努力家の女性たちが、市場の非現実的な前提によって自分を責め続ける構造。これは明らかにおかしい。

Aさんの告白を聞いて、僕は改めて気づいた。この業界の指導者たちは、なぜ「時間がない」という現実を軽視するのか。その背景には、構造的な問題がある。

まず、データから見てみよう。内閣府の調査によると、子育て中の女性の自由時間は平日平均1.7時間。これには移動時間や家事の合間も含まれる。つまり、まとまった集中時間は実質30分程度しかない日も珍しくない。

しかし、市場の指導者の大半は男性（約78%）で、そのうち子育て経験者は僅か23%。残りの77%は、子どもの突発的な発熱、夜泣きによる睡眠不足、保育園からの呼び出し—こうした「予測不可能な時間の奪われ方」を体験したことがない。

彼らにとって「時間管理」は、スケジュールアプリで解決できる論理的な問題だ。だから「早起きしてください」「隙間時間を活用してください」という、現実を無視したアドバイスを平気で口にする。

更に問題なのは、指導者自身が既に事業が軌道に乗った状態で語っていることだ。彼らの多くは、家事や育児を外注できる経済状況にある。1時間500円のベビーシッターを雇える立場の人間が、「みんなと同じ24時間です」と言っても、説得力はゼロだ。

僕がコンサルで最初に行うのは「現実の時間測定」だ。生徒には1週間、実際の可処分時間を記録してもらう。すると、自称「1日3時間は確保できる」と言っていた主婦層の実態は、平均32分だった。

この32分という数字こそが、真実なのだ。指導者たちは、この現実と向き合うことを避ける。なぜなら、32分という制約の中で結果を出すノウハウを持っていないからだ。

「時間がない」は甘えではない。それは、この市場が見て見ぬふりをしている、最もリアルな制約条件なのである。

あれから1ヶ月後、Aさんから驚くべき報告を受けた。

「先生、子供が急に発熱して、洗濯機を回している15分の間に慌てて書いた記事が、これまでで一番反響があったんです」

その記事を見せてもらうと、確かに誤字もあれば、構成も完璧ではない。しかし、そこには「完璧」を目指していた頃の投稿にはない、生々しいリアルさがあった。

「子供の熱で焦りながらも、同じ状況のママたちに伝えたいことを必死に書きました。15分という制限があったから、余計なことは考えずに本当に大切なことだけを」

この投稿から生まれた収益は、その月だけで20万円を超えた。Aさんが3時間かけて「完璧」を目指していた頃の投稿は、せいぜい数千円の成果しか生んでいなかった。

なぜこんなことが起きるのか。答えは「完璧主義の罠」にある。

完璧を目指すとき、僕たちは「減点法」で考える。「これは足りない」「あれも不十分」と、常に欠点を探し続ける。その結果、読み手に響く「核心」がぼやけてしまう。

一方、15分という制限があるとき、僕たちは「加点法」に切り替わる。「この短時間で最も伝えるべきことは何か」と、価値の本質を見極めざるを得なくなる。

Aさんの成功は偶然ではない。制約こそが創造性を生み、時間の制限こそが価値の純度を高める。これは認知科学でも証明されている事実だ。

完璧主義を手放した瞬間、Aさんの発信は変わった。そして市場も、その変化を敏感に察知したのだ。

Aさんの事例を見て、多くの人が疑問に思うだろう。「なぜ15分で書いた記事が、3時間かけた記事より反響があったのか」と。

これは偶然でも奇跡でもない。明確な理論的根拠がある。

「私にもできる」理由

ここまで読んで、あなたは気づいたはずだ。15分で結果が出るのは、特別な才能が必要だからではない。むしろ、時間をかけすぎることで本質が見えなくなっていただけなのだ。

あなたに必要なのは、Aさんのような「制約」を意図的に作ること。そして、その制約の中で「何を伝えたいのか」だけに集中すること。

これができれば、あなたも15分で月収20万の記事が書ける。理論的に、必然的に。

理論だけでは意味がない。Aさんが90日で初収益を達成した具体的手法を、包み隠さず公開しよう。

成功の核心：「判断」ではなく「実行」

Aさんのシステムの真髄は、15分間に「判断」を一切持ち込まなかった点だ。何を書くか（ネタ）、どう書くか（テンプレート）、どう返すか（定型文）。すべてが事前準備により自動化されていた。

多くの人が15分を無駄にする理由は「考える時間」の存在だ。しかし、本当の効率化とは「考えない仕組み」の構築なのだ。

ここまで読んで、あなたは気づいただろうか。僕が紹介したAさんの手法は、巷にあふれる「テンプレビジネス」とは根本的に異なることを。

市場には「コピペで月収100万」「テンプレに当てはめるだけ」といった甘い誘惑が溢れている。しかし、これらは本質的に危険だ。なぜなら、思考を停止させるからだ。

テンプレートの罠

テンプレートは確かに手軽だ。しかし、それは「魚を与える」行為に過ぎない。一時的には結果が出るかもしれないが、市場が変化した瞬間に通用しなくなる。

一方、僕がAさんに教えたのは「魚の釣り方」だ。15分という制約の中で、自分の頭で考え、自分の言葉で表現する力。これは一生モノのスキルになる。

真の分かれ道

ここで、あなたは選択を迫られている。

思考停止のテンプレートに頼り続けるか。それとも、本質的な思考力と発信力を身につけるか。

僕は後者を選ぶ人だけを応援したい。なぜなら、そういう人だけが長期的に成功し、家族との時間も大切にできるからだ。