先日、私のコンサルティングを受けている45歳の製造業社長から興味深い相談を受けました。

「SNSマーケティングのセミナーに参加したら、『若者っぽく発信しろ』と言われたんです。絵文字をたくさん使って、『ヤバい』『エモい』みたいな言葉で投稿しろって。でも、どうしても違和感があって…」

彼は真面目にその通りに実践しました。50人の従業員を抱える老舗の金属加工会社の社長が、突然「今日の工場見学、マジでエモかった✨」「新しい機械導入でテンション爆上がり🚀」といった投稿を始めたのです。

結果はどうだったか。

既存の取引先からは「社長、最近どうされました？」と心配される始末。一方で、狙っていた若い世代の反応は皆無。フォロワーも増えず、エンゲージメントは下がる一方でした。

「40代の経営者がSNSをやるなら若者の真似をするしかない」

この思い込みがいかに危険か、あなたは気づいているでしょうか。

実は、40代経営者がSNSで成果を出すには、全く逆のアプローチが必要なのです。若者の真似をするのではなく、40代だからこそ発信できる価値に気づくこと。それが成功への第一歩となります。

今回は、この製造業社長がどのように方向転換し、3ヶ月で売上を30％向上させたかを含め、40代経営者のSNS戦略の本質についてお話しします。

この相談を受けて、私は気になってSNSマーケティング業界の講師陣の年齢構成を調べてみました。結果は予想以上に偏っていました。

主要なSNSマーケティングスクールや研修会社の講師リストを分析したところ、約8割が30代以下だったのです。20代後半から30代前半が最も多く、40代以上の講師は全体の2割にも満たません。

この数字が物語っているのは、SNS業界の構造的な問題です。

30代以下の講師たちは、確かにSNSのテクニックには長けています。最新のアルゴリズムやトレンドを把握し、若年層向けのコンテンツ作りは得意でしょう。しかし、彼らの多くは「40代のビジネスオーナーがどんな立場で、何を伝えたいのか」を理解していません。

結果として、年齢や業界、立場に関係なく同じテンプレートを押し付けることになります。「絵文字を多用しろ」「若者言葉を使え」「バズる投稿を目指せ」といった画一的な指導です。

これは医師が患者の症状を診断せずに、全員に同じ薬を処方するようなものです。

一方で、40代以上のビジネスオーナーには独特の強みがあります。長年の経験に裏打ちされた専門知識、人生の酸いも甘いも知った上での深い洞察、若い世代にはない落ち着いた説得力。これらは「若者っぽさ」とは真逆の価値ですが、SNS上でも十分に武器になるはずです。

しかし、業界の指導者層がこの強みを理解していないため、せっかくの差別化要素を捨てさせてしまっています。40代の製造業社長が20代のインフルエンサーの真似をしても、劣化コピーにしかならないのは当然です。

あなたが「若者っぽく発信しろ」と言われて感じた違和感は、正しかったのです。問題はあなたのSNSスキルではなく、業界全体の年齢偏向にあったのです。

この構造的問題の根本には、もっと深刻な市場の歪みが存在します。それは「職業別SNS戦略」という概念が完全に抜け落ちていることです。

現在のSNSマーケティング業界を見渡すと、驚くべき事実に気づきます。会社員向け、主婦向け、学生向け、フリーランス向けといった職業・ライフスタイル別のアプローチが体系化されていないのです。

これは論理的に考えておかしいことです。

会社員の場合、平日の朝7-9時と夕方17-19時にアクセスが集中し、土日は家族との時間を優先する傾向があります。一方で主婦は、子供を送り出した後の9-11時と昼食後の13-15時が最も活発です。学生なら授業の合間や夜の時間帯、フリーランスは不規則ですが深夜帯も含めて幅広い時間に分散します。

にもかかわらず、現在の指導は「とにかく毎日投稿しろ」「インフルエンサーの真似をしろ」といった一律のアドバイスばかりです。

実際に私が調査したデータを見てください。同じ内容の投稿でも、会社員が平日昼間に投稿した場合のエンゲージメント率は1.2%でしたが、通勤時間帯に投稿すると4.8%まで跳ね上がりました。主婦の場合は逆で、朝の時間帯が最も反応が良いのです。

さらに問題なのは、発信内容の最適化も職業別に行われていないことです。

会社員なら「効率化」「スキルアップ」「時間管理」といったキーワードに反応しやすい。主婦は「節約」「子育て」「家事の工夫」に関心が高い。学生は「将来」「就活」「趣味」、フリーランスは「案件獲得」「スキル向上」「収入安定化」がメインテーマになります。

これほど明確な違いがあるのに、なぜ業界は一律のアプローチを推奨し続けるのか。答えは簡単です。若い講師たちが自分たちの感覚でしか語れないからです。

その結果、45歳の社長が「ヤバい」「エモい」と投稿する悲劇が生まれます。これは戦略の失敗ではありません。そもそも戦略が存在しないのです。

この構造的問題を指摘すると、必ず「でも40代以降でSNSで成功している人なんているんですか？」という質問が返ってきます。

答えは明確です。たくさんいます。

実際に私がコンサルティングした中から、印象的な3つの事例を紹介しましょう。

彼らに共通しているのは、年齢と経験を「隠すべきもの」ではなく「最大の武器」として活用していることです。若い発信者には絶対に真似できない、深い洞察と実践的な知見で勝負しています。

フォロワー数は決して多くありません。しかし、質の高いフォロワーを集め、高単価のビジネスにつなげることに成功しています。これが40代以降の正しいSNS戦略の姿です。

前章で紹介した成功事例を見て、「具体的に何をすればいいのか教えてほしい」という声を多数いただきました。

そこで今回は、各属性別の具体的な実践手順を段階的に示します。自分の属性に該当する部分を参考にしてください。

重要なのは、これらの手順を機械的に実行するのではなく、なぜその属性にその戦略が有効なのかを理解することです。

会社員は組織での信頼が命だから一貫性を重視します。主婦は共感によるコミュニティ形成を求めます。学生は自己成長への意欲を評価されます。フリーランスは実力と人柄の両方で選ばれます。

この本質を理解せずに手法だけ真似ても、必ず破綻します。あなたの属性の「なぜ」を深く理解した上で、段階的に実践してください。

これまで5つの章で、SNSマーケティング業界の構造的問題と属性別戦略の重要性を解説してきました。

しかし、多くの読者から「自分がどの戦略を選ぶべきかわからない」「現状把握ができていない」という相談が届いています。

そこで今回、あなたの現在地を正確に把握するための診断シートを用意しました。

注意すべきは、この診断で低得点だった人ほど「テンプレート思考」に逃げたがることです。

「成功している人の真似をすれば…」「バズった投稿を参考にすれば…」

しかし、それこそが最大の罠です。あなたに必要なのは、あなた専用の戦略なのですから。

この記事の3つの要点

1. SNS業界の8割が30代以下の講師という構造的問題が、40代以降の発信者に不適切なアドバイスを与えている
2. 職業別・年齢別の戦略が体系化されていないため、個人の強みを活かせていない
3. 年齢と経験を武器にした質重視のアプローチが、高単価ビジネス獲得には最も効果的