ビジネスにおける「伸張反射」について
この記事を読む前に、1つ前の記事までも読んでおくことをおすすめします。
どうも、名無しのマーケターです。
今回の記事は、今までの記事で散々言っていたことの繰り返しのように感じるかもしれません。が、それくらい安寧をしっかりと手に入れるためのビジネスを展開したいなら大事なことなんだと思ってください。
さて、物事には”恒常性”と呼ばれるものがあります。”ホメオスタシス”や”振り子の運動”と言い換えることもできます。(2記事目を合わせて読んでもらうと、より理解が深まるので復習がてら読んでみてください。)
これはいわゆる”平均的なラインに収束しようとする力”であるともいえます。
- 増えすぎたものは減るし、
- 暑ければ汗をかいて、寒ければ震えて平熱に保とうとするし、
- 何かに挑戦しようとすれば、恐怖心や不安が生まれて現状維持しようとする
そんな力です。
今回は、これに似たような力学の話です。
”伸張反射”という現象
これは主に人体におけるストレッチ運動の用語です。
ある筋が急に引きのばされると、それ以上に筋が伸びてダメージを受けないように収縮させて保護しようとする反射反応のことをいいます。要は、急に伸びたらびっくりして戻ろうとするよ~ってことです。
これはビジネスにおいてもよく見られる反応です。急に人気が出たと思ったら、いつの間にか全然話題にでなくなった商品やサービスってないですか?
例えば、マリトッツォというスイーツ。
2021年ころにインスタグラムを起点に大流行したものの、2022年には店頭で全く見かけなくなりました。たった1年で急激に流行り、そして消えました。
例えば、タピオカ。
今は定番品として定着しつつあるものの、5年前とかは波が激しい商品でした。(かなり昔からありながら、流行ったり廃れたりを繰り返していた感じ)
2018年ころに火が付き、大ブームに。「タピる」といった動詞が作られて、一時期はチェーン店だけでなく、個人店のような店もコンビニ感覚でそこらへんにありました。しかし、コロナの影響もあってか、2020年には下火に。私の住む町でも、タピオカ屋があった場所に別のお店が入ってたりなど3店舗くらいなくなっていました。
ネット上でも、急激に人気になったYouTuberが、ほんの数年でオワコンになってしまう…なんてのはよく見ますよね。
急激に伸ばすと、壊れてしまう
急激にゴムを伸ばすと、そのままバツっと切れてしまいますよね。普段運動しない人が、急に激しい運動をするとアキレス腱が切れるのも同じです。
つまり、あなたがやろうしているビジネスが”急激に伸びている市場”にあるものだと、短命に終わる可能性があるよということです。同じように、そうでない市場でも急拡大させすぎると同じように崩壊する可能性が高いです。
もちろん、短期的には波にのって伸びていきます。
しかし、すでに伸び切っている場合はすでにピークを過ぎているため、その短期間で一生分稼げなかった場合、負債が残る可能性があります。ピークに参入した場合は、しょっぱなから市場がシュリンクするので、初期投資分すら回収できません。
それがわかりやすい例が、高級食パン専門店の乃が美で起こった問題です。
参照:https://bunshun.jp/articles/-/61612
ここ数年間で急激なブームが起き、直営14店舗とFCで200店舗近くまで店舗が急増。
しかし、ブームが長持ちせずに、開店したものの採算が取れなくなり閉店を余儀なくされている店舗が爆増しているようです。FC店舗の”ほぼすべて”が赤字という惨状…。直営店はロイヤリティを受け取る側なのでダメージが少ない物の、FC店舗は売上関係なくロイヤリティが発生します。赤字だろうとロイヤリティを上納しないといけません。
それで閉店だけでなく自己破産するFCオーナーも増加している状況です。もちろん、開店資金は回収できません。
これは乃が美が悪いわけではありません。急激なブームに目がくらみ、安易に流行に乗ってしまったFCオーナーの判断が原因です。残酷ですが、見る目がなかったということです。
この構図ってインフルエンサー界隈に似てませんか?
大元が”俺みたいになるノウハウ”を販売します。大元はFC本部です。購入者はFCオーナーです。ブーム初期に参入した人は、かろうじて短期的に稼げます。しかし、金太郎飴が増殖すれば、市場価値は下がります。希少性がなくなりますから。で、後発組は原資回収できずに終わります。
結果として心が壊れ、動画編集コンテンツだけでなくコンサルも受けたにもかかわらず1件も仕事がとれずに妻子供を殺してしまう悲しい事件が起きたりするわけです。
でも、FC本部である大元のインフルエンサーはノーダメです。内心で「養分乙wwwww」と思ってても、「自己責任」の一言で片付くわけですから。
あなたがやっているのはどの段階ですか?
急激に伸びた市場で、誰もが知っていて騒いでいる過熱感のあるタイミングで飛びついてませんか?
おいしいのは、誰も騒いでなくマイナーなタイミングと、お祭りが終わって人が減ったタイミングです。前者はこの後祭りがくれば、人が集まってきたときに先に商売ができます。市場の拡大に乗っかれるタイミングです。後者は、プレイヤーが減ることで相対的に狙えるパイが増えるタイミングです。
例えば、ここ1年でAIブームで急激に株価がのびた、さくらインターネットっていう銘柄があるのですが、わずか1年で株価が8倍に伸びました。控えめに言って異常です。
出典:Google finance
伸び切った8倍の青○の部分でまさか買おうとなんて思えないですよね。でも、話題に乗っかってここで買って、今半分以下になっている人がめちゃくちゃ多いんです。Xで検索してみてください。
スーパーで200円のチョコレート菓子が1600円になった…としたら「高いわw買うかこんなんw」って誰でも判断できます。どう考えても異常だからです。ここで買いあさる人は冷静に考えておバカです。
でも、なぜかビジネスや投資になるとみんなおバカになってしまいます…。
過熱感に惑わされて「今がチャンス!」って思ってしまうんですよね。でも、そう思っている人はたくさんいて、もれなくそれは”大衆というカモ”なのに…。そのカモを食べてぶくぶく太っているのが、今のインフルエンサーたちです。
あなたは実はカモになってませんか?ここ数年で急に誰もが話題にするようになってるものは基本的に要注意ですよ。
UNIQLOとHIKAKINの共通点
さて、インフルエンサー界隈の中でも、やってることはほぼ変わらないのに10年近く、炎上もほぼせずに安定的な人気を保ち続けているインフルエンサーがいます。それがHIKAKINです。瞬間的な話題では他のインフルエンサーに持ってかれつつも、なんだかんだで安定感抜群でトップに君臨しています。登録者数も常に伸び続けて1500万人に。
しかし特に炎上要素のない、割と普通なコンテンツばかりで昔っからやってることや雰囲気の大筋は変わりません。まあ今はあまりにもリッチすぎて日常生活を見せるだけのコンテンツも強いわけですが。笑
さて、似たようにゆっくりですが着実に伸びて圧倒的な地位を気付いたビジネスがあります。それがUNIQLOですね。
二つに共通しているのは”長い年月をかけて、目立たず浸透し、定番品となった”ことです。
正直、短期的にはこの2つ以上に話題をかっさらったり、業績を伸ばした会社や人はいます。
HIKAKINでいえば、ヒカルやコムドット、えびすじゃっぷなどなど。UNIQLOでいえば、無印良品やしまむら、H&MやForever21などの外資系。しかしそれらは炎上によるファン離れや、経営難による日本市場撤退など、伸びが鈍化していたりします。その裏で、UNIQLOやHIKAKINはいつの間にか圧倒的地位を確率していました。
なぜそうなったのか。
ゆっくり作った”定番品という地位”の威力
その理由は”定番品”になったことです。
奇をてらったり、無理に話題を作ろうとせず、着実な成長をしていたこと。急激に伸びないからこそ、伸張反射が起こらず、伸び続けていつの間にか大きなパイを獲得しているわけです。
HIKAKINの場合
最近のインフルエンサー、例えばYouTuberは1年そこらで100万登録狙うなど、高い水準を早く達成しようとしすぎて手段が過激になっています。だから迷惑系だとかなんだとか無理なコンテンツを作って、結果として最後は息詰まって消えていきます。
しかしHIKAKINに関しては、初期からコンテンツに派手さはそこまでありません。敵ができないベーシックなコンテンツがメインです。だから瞬間的な再生数は負けるものの、いつでもどの年代にも見せられるコンテンツであることから、過激なコンテンツが多い今の環境では逆に貴重になっています。
どの世代でも人気な、アンパンマンやドラえもんみたいな感じですね。展開は一緒なのに、なぜか飽きない無難なおもしろさ。見てて疲れない感じ。
おそらく、デビュー当初のHIKAKINはそんなに短期的に登録者を増やそうとなんて思ってなかったでしょう。結果としてそうなったものの、1年で100万人登録などは「いったらいいなあ」って感じだったのではないでしょうか。
で、短期的に知名度を得ようと過激なコンテンツに走った人は、炎上したり逮捕されたりでネガティブな印象が付いたり、飽きたり、他の過激なコンテンツに関心を取られるなどして伸びなくなります。相対的に無難な炎上知らずのHIKAKINの価値が上がるという結果にもなっています。
しかし、とはいえHIKAKINもインフルエンサーです。その知名度は芸能人級。もし今後”なにか”があったときは、影響力の逆回転が起こるリスクはかなりあります。
UNIQLOの場合
UNIQLOの服は、良くも悪くもほぼ全アイテムがベーシックなものです。
必要十分なおしゃれ感や機能性はいれこむものの、奇をてらったおしゃれさや、持て余す機能性はありません。ロゴも大々的にプリントされていないので、UNIQLOであるという主張もありません。
しかしだからこそ、どの年代でもどの時代でも国でも気にせず着れるという”UNIQLOでいいや感”があります。安価なので景気の影響もそこまで受けません。だから同じような服が毎年毎シーズンしっかり売れ続けているわけです。
しかし、HIKAKINと異なる点としては、UNIQLOは個人の影響力と紐づいていないので、影響力の逆回転も起きません。
柳井正さんが仮に亡くなってもUNIQLOは残りますし、仮にUNIQLOの社員が不祥事を起こしたとしても、UNIQLO自体がなにか問題起こしたことにならないので一時的な売上減少にとどまるでしょう。
”属人生がない”というのは、リスク回避の面で非常に優位性があるのです。
ビジネスはじわじわ時間をかけて伸びている、伸びていくものをやろう
みんなが話題にしていて、急拡大しているものはどうしても魅力的に見えます。それは人間の習性なので仕方がないです。
しかし、ここまで書いてきたように、急激に伸びたものは急激に縮みます。伸ばしすぎると勢いのまま切れてしまいます。
一方で、少しずつ時間をかけて伸ばしたものは、なかなか切れずに伸び続けます。ゴムで試してみてください。ガッと一気に伸ばすとすぐに切れますが、何日もかけて少しずつ少しずつ伸ばしていくと切れずにどんどん伸びていきます。ビジネスにおいて重要なのは、こっちです。
逆に、伸び切ったあとに、その市場に急激に人が増えだしたら警戒しましょう。オワコン化が近いかもしれません。
さて、我々がやるべきビジネスの要素をまとめますね。
- 振り子の法則の”揺れないところ”で
- ”影響力の逆回転”の心配をなくして、
- ”伸張反射”が起きないように、ゆっくり伸ばすこと
これらをすべて満たしたものが、私が取り入れている”名無しのマーケティング”です。
知名度や影響力、フォロワー数はもちろん市場の急拡大にのることもなければ、影響力の逆回転などのリスク面をとことん排除したうえで裏からビジネスを仕掛けること。
SNSが発達したことで、ある意味で総監視社会ともいえる現代において、これほど自由な仕事はありません。”リスクを恐れる必要がない”というのは、圧倒的な優位性になります。
自分の名前も顔も声も出さないので、ライフステージの変化によって動きにくくなることもありません。(子供できたりすると、子供の名誉のためにデジタルタトゥーとか意識せざるを得ないのが巷の方々です)
自分でいうのもなんですが、本当に本質的なことをしているなと。
さて、そんな”名無しのマーケティング”に関して、いよいよ次の記事で紐解いていきます。次の記事が最後です。
ここまで読んできたあなたなら、きっと響くかと。ぜひ最後まで読んでみてください。